買取専門店を開業・経営するにあたって、知っておかなくてはならない法律について、紹介していきます。
古物、つまり中古品売買に関しては、犯罪抑止の観点から詳細な決まりが法律で定められており、
事業として行うためには警察へ申請して許可を得る必要があります。
古物営業法とは
盗品等の売買の防止、被害品の早期発見により窃盗その他の犯罪を防止し、
被害を迅速に回復することを目的としています。
盗品の売買以外にも、偽ブランド品の取引の温床となることもあることから、
古物営業を行うためには、身元をしっかりと証明する必要があり、
そのために古物商許可の申請を行う必要があります。
そもそも古物の定義とは
古物営業法施行規則で定められる「古物」とは、「一度でも取引をされたことのある物品」のことです。
未開封・未使用の新品であっても、一度でも使用するために取引されたものであれば、「古物」という扱いになります。
いわゆる「新古品」も、法律上では「古物」です。
法律には以下の13品目が、古物として定められています。
1.美術品類
2.衣類
3.時計・宝飾品類
4.自動車
5.自動二輪車および原動機付自転車
6.自転車類
7.写真機類
8.事務機器類
9.機械工具類
10.道具類
11.皮革・ゴム製品類
12.書籍
13.金券類
古物営業
「古物」の「売買」「交換」「委託を受けて売買」「委託を受けて交換」を行うのが、古物営業です。
古物営業には、以下の種類があります。
古物商(1号営業)
リサイクルショップ
買取専門店
古美術商
古本屋
古着屋
中古車販売
中古パソコン販売
中古CD、DVD、ゲームソフト販売
金券ショップ
古物市場主(2号営業)
古物商同士での古物の売買、交換を行うための「古物市場」を経営する業態のことです。
古物競りあっせん業者(3号営業)
古物売買の斡旋を競りの方法で行う業態のことです。
ヤフオクなど一般の方でも参加できるオークションを指します。
買取専門店の開業には、古物商(1号営業)の許可証があれば問題ありません。
古物営業における義務について
古物商許可の免許を受けた業者には、いくつかの「遵守事項」を守る義務があります。
古物商の三大義務とも言われております。
取引相手の確認義務
古物の取り引きをする場合は、次の掲げるいずれかの方法で相手の真偽の確認をしなければいけません。
なお、1万円未満の取引の場合で、例外品(自動二輪車、原動機付自転車、家庭用テレビゲームソフト、CD・DVD等、書籍等)以外の取引を行う場合は、この限りではありません。
いずれか一つを実施、ほとんどの買取専門店やリサイクルショップは2つとも実施をしています。
- 相手から運転免許証や健康保険証など本人確認書類の提示を受けること
- 従業員等の面前で「住所、氏名、職業、年齢を自書した文書」を受け取ること
取引記録の保存義務
古物商は、古物の売買を行った場合には、次の事項について、
取引の都度、帳簿又は電磁的方法により記録して保存(3年間)しなければいけません。
- 取引の年月日
- 取引の古物の品目、数量
- 古物の特徴
- 取引相手の住所、氏名、職業、年齢
- 相手の真偽を確認するためにとった措置の区分
不正品等発見時の警察官への通報義務
取引の古物が盗難品等の疑いがある場合には、警察官に申告しなければいけません。
その他の義務
・ホームページを利用した取引を行う場合の届出義務
・管理者選任義務 営業所ごとに管理者を選任すること
・変更届出義務 申請と異なる事由が生じた場合は、警察署に届出を行うこと
・取引場所の制限 営業所・取引先の住所・届け出を行った住所(仮設店舗)
・許可証等の携帯等
・標識の提示義務 古物商許可証プレート
・名義貸しの禁止
・品触れの保存義務 品触れを受け取った場合には、日付を記録して保存すること。(保存期間:6か月間)
古物商許可の申請について
古物商許可の申請は、営業を行う住所を管轄する警察署で行います。
古物商担当係で申請書類をもらい、必要事項を記入し、
身分証明の書類や営業所となる物件の使用承諾書といった書類を揃え、窓口で申請を行えば問題ありません。
申請が受理されれば、1ヶ月半~2ヶ月程度で許可が下り、古物商許可証を取得できます。
最寄りの警察署の「生活安全課」が管轄となります。
古物商の許可申請に必要な手数料は19,000円です。
申請を取り下げた場合や不許可になった場合でも返還されませんので注意が必要です。
個人でも法人でも申請は可能ですが、
可能であれば法人での取得をオススメいたします。
理由は個人から法人に切り替える際には、
再取得となり申請手数料19,000円が必要になるからです。
もし無許可で古物商の営業を行うと『懲役3年または100万円以下の罰金』が課せられます。
行政書士に依頼する場合は総額で5万円~の費用目安となります。
古物営業所の有無
古物商許可を取得するには営業所の有無を記載する部分がございます。
基本的には盗品の売買などを防ぐ観点から営業所は「必要」となります。
インターネットでせどりを行うだけでも、
原則、営業所無しというのは認められません。
特に新たに古物商許可を取得する際には、
営業所に立ち入り審査などがある場合もございます。
また盗品の捜査などで不定期な立ち入りもあります。
営業所は自宅でも可能?賃貸は?
結論から申し上げますと持ち家(実家)なら自宅でも申請は可能
実家を営業所として申請する場合は、
家族の承諾書が必要になるケースがあります。
(最寄り警察署の生活安全課に相談)
賃貸の場合は物件オーナーの承諾が必要なりますが、
基本的には居住のみの利用がほとんどのため、
契約書に「事務所利用不可」と記載されていることが多いです。
古物営業所のバーチャルオフィス利用は?
残念ながらバーチャルオフィスも営業所としての利用が難しいです。
バーチャルオフィスを貸出側も許認可は得られないと記載されていることが多く、
警察署が管轄する許認可なので、営業実態がないバーチャルオフィスは難しいでしょう。
結論 営業所はどうすれば良いのか
資金に余裕がある場合は事務所を借りましょう。
「数ヶ月分の敷金や保証金が必要ですが、売買する商品の倉庫にもなります」
起業し始めなどでリスクを取れない方は、
家族にお願いして実家を営業所でスタートしましょう。
事業が軌道に乗ったら「お店か事務所に移転」
自分も始めは実家からスタートし、
後に買取専門店をオープンしました。
買取不可の商品とは
買取の際には、盗品や偽ブランドなどのコピー品について、特に注意する必要があります。
もし、こうした品が持ち込まれたことに気が付いた場合には、すぐに警察に届けなくてはなりません。
そして、盗品とは知らずに品物を買い取ってしまった場合でも、
一年以内にその被害者から返還請求があれば、せっかく買い取った古物を無償で返還しなければなりません!
(盗品及び遺失物の回復)第二十条 古物商が買い受け、又は交換した古物(商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十九条 に規定する有価証券であるものを除く。)のうちに盗品又は遺失物があつた場合においては、その古物商が当該盗品又は遺失物を公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合においても、被害者又は遺失主は、古物商に対し、これを無償で回復することを求めることができる。ただし、盗難又は遺失の時から一年を経過した後においては、この限りでない。
盗品について
盗難届、遺失物届のあったものを迅速に発見するため、
警察から被害品の特徴が「品触れ」として送られてくることがあります。
それを確認し、もしそうした品を受け取った場合にはすぐに届け出なくてはなりません。
また、買取の際に提示された身分証や本人確認書類などに不審な点がある場合には、
しっかりと確認を行い、場合によっては取引をしないのが良いです。
コピー品・不正品
ブランド品のコピーなどについては、見分けるのに専門の知識が必要となります。
フランチャイズであれば、そうした見分け方のノウハウが本部から共有されることもありますが、
専門知識がない場合、こうした品は取り扱わないのが無難です。
特定商取引法とは
買取専門店の経営に際し、古物営業法や古物営業法施行規則のほかにもう一つ、気にするべき法律があります。
それが「特定商取引法」です。
この中で買取専門店が気にするべきなのは、以下の2つの場合です。
通信販売を行う場合
特定商取引法に関する表記をしっかりと行い、商品に関する認識の齟齬(そご)を避けたり、
商品の欠損、損傷などの場合についての定めを明確にするなどの規定があります
出張買取を行う場合
10年ほど前、貴金属の出張買取の被害が多発しました。
高齢者の一人暮らしなどを狙い、アポなしの飛び込み訪問によって、相場よりかなり低い値段で貴金属を買い取るというものだ。また「いらない呉服などを買い取る」とアポを取って、実は貴金属の買取が目当てだったというものも多い。
そのような経緯から、アポなしの飛び込み買取については規制を受けることになりました。
不招請勧誘の禁止
依頼者から「着物を買い取ってほしい」と連絡があり、
訪問してから「他にも貴金属はないですか?」と勧誘することも違反です。
あくまで着物の買取を要請したのであって、他の商品を依頼した訳ではないからです。
またアポなしの飛び込み買取は、原則違法となる。
事業者の氏名等の明示
事業者は、訪問購入をしようとするときは、勧誘に先立って、相手方に対して以下のことを告げなければなりません。
- 事業者の氏名(名称)
- 契約の締結について勧誘をする目的であること
- 購入しようとする物品の種類
行商許可証の携帯と名刺のお渡しを徹底しましょう。
再勧誘の禁止等
業者は訪問購入をしようとするときは、勧誘に先立って相手方に勧誘を受ける意思があることを確認しなければなりません。
また、相手方が契約締結の意思がないことを示したときには、
その訪問時においてそのまま勧誘を継続することや、その後改めて勧誘することが禁止されています。
書面の交付(クーリングオフ)
- 物品の種類
- 物品の購入価格
- 代金の支払時期、方法
- 物品の引渡時期、方法
- 契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項
- 物品の引渡しの拒絶(法第58条の15)に関する事項
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
- 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名
- 契約の申込み又は締結の年月日
- 物品名
- 物品の特徴
- 物品又はその附属品に商標、製造者名若しくは販売者名の記載があるとき又は型式があるときは、当該商標、製造者名若しくは販売者名又は型式
- 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
- そのほか特約があるときには、その内容
書面の交付から8日間であればクーリングオフが適用となります。
出張買取時には書面の交付とクーリングオフの説明は徹底しなければいけません。
まとめ
買取専門店の運営には、関連する法律がいろいろとあります。
複雑に感じるかもしれませんが、営業にあたって一度やり方を覚えてしまえば、
特別気にすることが多いわけではありません。
法律や制度は、強力な味方にもなるものです。
注意するべき点を注意して、堅実な運営を行いましょう。
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